ARABIA

VALENCIA Show Plate

以前に増して「もう作られていないもの」や「同じものが二つとないもの」に心惹かれることが増えた最近。

洋服も好きですが、特に小物や器などのビンテージ品、廃番、限定品に惹かれてしまいます。

作家ものの器なら、かたちの微妙な歪みや、釉薬のかかり具合の違いに魅力を感じたり、今では大量生産されているブランドでも、昔はひとつひとつが手作業でつくられていた背景を知ると、さらに欲しくなってしまうのです。

imptionで仕事をしていると、そんなアイテムに日常的に出会えるので、つい「あれも欲しい、これも欲しい…」と妄想ばかり膨らみます。

何を盛りつけようか、どうコーディネートしようか。さらにビンテージ品であれば、「これはどんな人が使っていたのだろう？」と、物語まで想像できるのが魅力です。

使うたびに、物語が増えていく

今回ご紹介するのは、そんな妄想を久々に掻き立てられた北欧ビンテージの逸品。

imptionでも何度もお取り扱いさせていただいている、北欧・フィンランドを代表するテーブルウェアメーカー“アラビア ARABIA”。

1873年の創業以来、幅広いラインナップの北欧デザインを展開しており、日常に寄り添った機能美に優れるキッチンウェアから、アートデパートメントによる一点ものまで、セラミックを通じて暮らしを豊かにしてくれる北欧ブランドのひとつ。

世界中にファンが多いのは、美しさと実用性を両立する北欧デザインならではの魅力と、確かな品質があってこそ。
そして、その魅力を支える多くの才能あるデザイナーたちの存在も忘れてはなりません。

今回ご紹介させていただくのは、同社よりビンテージの「バレンシア Valencia」のショープレート。

デザインを手掛けたのは、ARABIA黄金期を支えた名デザイナー“ウラ・プロコッペ Ulla Procope”。
フォルムと絵付けの両方を自らデザインできる才能の持ち主で、数々の名作を世に送り出しました。

代表作「ルスカ（RUSKA）」をはじめ、「メリ（MERI）」「アネモネ（ANEMONE）」など、どれも今なお世界中にコレクターがいるほどの人気シリーズ。

中でも「Sモデル」と呼ばれる器のフォルムは、その汎用性と実用性の高さから多くのシリーズに採用され、30種以上にもわたって展開されました。

1960年から2002年にかけて製造されたこのシリーズ。
ARABIAの中でも高級ラインとして発売され、同社の中でも異彩を放つ、美しいデザインです。

その中でも今回入荷した一枚は、手描きのサインが入った1960〜70年代の希少なビンテージアイテム。

また、60〜70年代に製造された個体には手描きのサインが入っており、80年代以降の復刻品には活字のスタンプが使われているため、サインの有無がヴィンテージの見分け方の一つともなっています。

シリーズ名の「Valencia」は、スペイン南東部の港町の名前に由来し、このネーミングも、デザイナーであるウラ・プロコッペの人生と深い関わりがあります。

彼女は1968年、わずか47歳の若さで病により亡くなりますが、療養の地として選んだのがスペインのカナリア諸島で、終生にわたりスペインの海辺を愛していたといわれています。

そんな彼女の愛した景色や空気が、このValenciaのデザインに込められていると考えると、より一層味わい深く感じられもの。

地中海の青と陽光を思わせる、濃く深いコバルトブルーの絵柄が印象的で、ひとつひとつフリーハンドで描かれた模様には、機械製品にはない温もりと個性が宿ります。

直径33cmのリム付きの大きなプレートは、さまざまなシーンで活躍。

オードブルや大皿料理を盛り付けるパーティーシーンにぴったりですし、ケーキを並べて華やかなティータイムにも最適。
深みのある青色は、和食器とも好相性で、お刺身や和惣菜の盛り皿としてもとても映えます。

さらに、お香やアクセサリーを置くディスプレイトレーとして使うのもおすすめ。

単なる食器としてだけでなく、空間そのものをアートにしてくれる、そんな存在感を持った一枚です。

ARABIA最後のハンドペイント作品としても知られ、ビンテージ市場でも徐々に数が減ってきている希少な「Valencia」シリーズ。

その美しさ、実用性、そして背景にあるストーリー。すべてを含めて大切にしたくなる逸品。

誰かの手で作られ、誰かの暮らしを彩ってきた一枚を、今度はあなたの手で、日々の中に迎えてみてはいかがでしょうか。