- Top >
- SHOP BLOG
- >
- BLOG-経堂店
- >
- ヴィトラ Vitra ロッキングスツール ハイタイプ メープル無垢材 イサム・ノグチ Isamu Noguchi 廃番 希少 ~すべては形のなかに~
ヴィトラ Vitra ロッキングスツール ハイタイプ メープル無垢材 イサム・ノグチ Isamu Noguchi 廃番 希少 ~すべては形のなかに~
Vitra
Rocking Stool
眠りから目が覚めると喉はいつもガラガラ。昨日届いた加湿器をつけてみて、結構冬の乾燥は過酷であった事に今更ながら気が付いた私です。
少しずつ、わずかにけれども確かに伸びている日中の時間。
寒さとしてはこれからが本番なような気がしますが、春への兆しとして少しずつ準備をしてゆきたいものです。
今回は、現在入手の難しい素敵なスツール。
宜しければ、是非最後までお付き合い下さいませ。
彫刻はもちろん、Akariも、そして家具も
今回は腰掛けであるスツール。
表面の印字は剥がれておりますが、残存している部分よりスイスに本社を構える世界的なファニチャーブランド、ヴィトラ Vitraによって手掛けられたアイテムと判別できます。
1950年に什器を手掛ける会社として設立されたヴィトラは、今でもオフィスファニチャーを中心にインテリアを広く取り扱っています。
ですが一貫しているスタンスとして感じられるのは、機能に優れたデザインや豊かな色彩、そして分け隔てなく手掛ける名品の復刻事業。
利益を挙げる事が至上命題である企業でありながら、切れ目なく名品を提供し続ける。その姿勢は消費者の選択肢としてとてもありがたい事。
例えばイームズ夫妻が手掛けたハーマンミラー社の名脚シェルチェア。シェルの素材であるFRP(ガラス繊維強化プラスティック)は再生利用が難しく、環境負荷の観点から製造が中止になりました。
それをポリプロピレンという新しい素材に置き換えることで製造は続き、心地良いしなりに新しいカラーリングと優れたデザインが持つ万能性を改めて知らしめる形となっています(ちなみに、現在は製造がハーマンミラー社へと受け継がれています)。
他にもイームズが自邸に飾っていた民芸品であったハウスバードの商品化や、ジャン・プルーヴェやウェルナー・パントンといった名デザイナーのアイテムをラインナップ。デザインの間口を広く開け放っているヴィトラが、その中で手掛けたのが今回の1脚です。
デザインはイサム・ノグチ(1904-1988)。日本人の父とアメリカ人の母を両親に持ち、双方の文化を己のうつわの中で昇華した不世出の彫刻家として世界の評価を受けています。
彫刻のほかにも庭園の設計、舞台芸術、そしてインテリアデザインと多分野における活躍を見せており、日本でもその足跡を辿る事ができます。
アトリエを構え交流の深かった香川県牟礼町にはイサムノグチ庭園美術館、北海道札幌市には滑り台でもある「ブラック・スライド・マントラ」や広大な敷地をプランニングしたモエレ沼公園、そして伝説となった大阪万博の記念公園に残る「月の世界」や噴水群。最高裁判所内には非公開ながら小ぶりな噴水が設置されているようです。(※2枚の写真は、過去に訪れた時の記録。上は「月の世界」、下は噴水群です。この日は暑かった・・・。)
かつて神奈川県立美術館 鎌倉館に存在した彫刻「こけし」は、葉山館で変わらない姿を見せてくれています。
他にも横浜市青葉区の広大な遊び場 こどもの国にも実は作品があったりと、所縁が深いだけあって様々な作品を残している事が分かります。
(※鎌倉館にあった時の1枚です。)
そんなイサム・ノグチが手掛けたスツール。1954年の当初はノル(ノール Knoll)から発売されていたシリーズです。
古代アフリカの椅子に着想を得てデザインされ、脚部は同時期に活躍していたアーティスト・デザイナー、ハリー・ベルトイアへのオマージュとされています。
ワイヤーロッドの造作が美しく、現在も販売されているサイクロンテーブルのベースとなっている記念碑的1脚です。
その特徴はやはりロッキング(揺れる)事。
足元を見るとわずかに隙間が見えますが、これは段階を得てふくらみが付けられた結果。
(※裏面保護シールにはクラックが見られますが木部に影響は見られず、至って良好な状態です。)
ワイヤーは底面からしっかりと固定され、座面裏は円環の内側で溶接。
交差する場所も綺麗に溶接されているため強度に不安を感じる事なくお使い頂けます。
座面にはいやらしさを微塵も感じさせない柔らかなくぼみがつけられ、座った時の収まりの良さ、ずり落ち防止、手触りから陰影まで考慮した造形の手腕が楽しめます。
木部の素材はメープル無垢材。中央できれいに接合された表面にはメープルの特徴でもあるフレイム杢が現れて、光の加減で異なる生き物の表情もしっかり感じられるようになっています。
よく、優れた彫刻家は素材を見た時には完成形を捉えていると言われます。
個人的にイサム・ノグチには「石の彫刻家」のイメージがありましたが、枠で縛られる事のない造形眼が活かされている事を実感できるディティールの積み重ねは、インテリアデザインにおいても変わりがないのだと勝手に嬉しくなってしまいました。
イサム・ノグチは時代に翻弄された人。
日本人の親を持ち幼い時を過ごした場所なのに、戦争の災禍から敵国であったアメリカ人との心証を持たれ、日本で作品案が採用されなかった事があります。
また美術の薫陶を受けたアメリカでも日系アメリカ人としてスパイ容疑を疑われ、自ら志願した強制拘留であっても後から出所する事が叶いませんでした。
自らでは選べない環境に挟まれて、どれだけの苦悩を得たのかは想像もつきません。
ですが今残されている作品にはその陰りは感じられず、感情を超越した先にある「何か」をただ真摯に見つめている姿をいつだって想像してしまいます。
日本で出会った美濃和紙の提灯から生まれた照明 Akari。
細かなまだら模様が美しい庵治石(あじいし)をパリ・ユネスコ本部に使った縁から始まった、香川県牟礼町のイサムノグチ庭園美術館。
そして、アメリカで出会った彫刻家ハリー・ベルトイアに尊敬を伝えるロッキングスツール。
自らが生きてきた出来事を確かに形にした名品。使いながら手もとで楽しめる、貴重なプロダクトです。
現在は惜しくも廃番。人気も高まるこの1脚を、是非この機会にお迎えくださいませ。
BLOG-経堂店の最新記事
-
CATEGORY : SHOP BLOGUPDATE : 2024/04/28
-
CATEGORY : SHOP BLOGUPDATE : 2024/04/27
-
CATEGORY : SHOP BLOGUPDATE : 2024/04/26
-
CATEGORY : SHOP BLOGUPDATE : 2024/04/24
-
CATEGORY : SHOP BLOGUPDATE : 2024/04/23
-
CATEGORY : SHOP BLOGUPDATE : 2024/04/22
-
CATEGORY : SHOP BLOGUPDATE : 2024/04/21
-
CATEGORY : SHOP BLOGUPDATE : 2024/04/20