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ニーチェア エックス Ny chair X フォールディングチェア ロッキング オットマン付 ナチュラル ブルー 折畳 チェア 新居猛 MoMA 定価総額¥85,800- ~人の想いは現在進行形~
Ny Chair X
Rocking chair with Ottoman
今、私の中では三寒四温の三寒目くらいかな、と勝手に思っています。
雨が降って湿気が多いせいか、空気に緩さがあるように感じられ、春もすぐそこな雰囲気を感じているのです。
沈丁花(じんちょうげ)の特徴的な香りも過ぎ、メジロが花の蜜を吸いに来ていました。
日本の春はもうすぐ。今回はそんな日本で生まれ世界で評価されているロングセラーの1脚。
日本らしさが無ければ生まれなかったデザインを是非ご紹介させてください。
心を込めた、「出来るだけ」
ニーチエア。アイテムの名前と認識していないと、思わず聞き返してしまいそうな響きです。
チェアと名がつきながら、そんな一体化したような響きのチェアが今回のご紹介です。
デザインは新居 猛(にい たけし、1920-2007)。
徳島県にある新居氏の実家は柔剣道の用具を作っていましたが、敗戦後GHQより武道具の製造が禁止とされた事をきっかけとして大きくその暮らしを変えています。
木工の職業訓練を受け、父と共に家具を製造販売したのが1956年の事。学術機関で専門にデザインを学んだ経験はないという事でしたが、紆余曲折を経て1970年に発表されたニーチェアは、紛うことなき傑作の一つとして評価されています。
1955年、徳島県で振興のために行われた参考グッドデザイン展で新居氏が見かけたのはAXチェア。
デンマークモダンの代表ブランド、フリッツハンセンより発売されたこの椅子は得意の成型合板を使用した事、ラケットにも使われるコマ入れ成形を取り入れた事のほかに、優れたコストパフォーマンスが特徴でした。
その理由はノックダウン(組み立て)式という事。組み立てが簡単な仕様のため、部材をかさばらないように分解しての輸送が可能だったのです。
デザインを手掛けたピーター・ビットとオルラー・モルガード・ニールセンの代表作となり、またフリッツハンセンにおける看板商品にもなりました。
しかし、それを見た新居氏はさらなる工夫が出来るのではないかと考えたそうです。
画期的なAXチェアでも安全な輸送のために梱包材は多く使用されており、その分資材費や場所代が値段に転嫁されている。
そして構造的な面でももっと良い方法があるのではないか。
デンマークのグッドデザインとして紹介されていた椅子を前に中々の度胸ですね。
もちろん実力あっての目線と理解してはいるのですが、私なら舶来物としてありがたがるだけになってしまったと思います(笑)
そこからトライアンドエラーの日々が始まります。
新居氏がイメージしたのは映画監督が使う「ディレクターズチェア」。
折りたたみが出来て、コンパクトに持ち運びができる。
場所を取らないという事は、椅子を作る以外に掛かる費用が抑えられるという事。
より手が伸ばしやすい販売価格のため、この「折りたたみ(フォールディング」)という機能は新居氏の大きなテーマとなりました。
そうして1970年に発売されたニーチェア。様々な工夫が詰まっています。
フレームは軽くて丈夫、そして錆びにくいステンレスのパイプを採用。木部を取り付けるネジも後に錆びやすいスチールからステンレスに改良されたそう。妥協がありません。
今回はロッキングチェア。ゆりかごのように前後に揺らすカーブが足先に付けられています。
快適にロッキング、そして角度で変わる荷重のかかり方にも対応する優れた素材とデザインが見て取れます。
折りたたみを可能にした、布製のシート。
厚みを出すことの出来る綾織り(デニムと同じ織り方です)は織り上げた後に染められ、そして生地を敢えてひっかき起毛させる手順を踏んでいます。
厚みが出るとゴワゴワしがちですが、これによって手触りはとてもソフト。良い意味でイメージを裏切ってくれます。
そして折りたたみ椅子らしからぬ快適性を与えてくれるハイバック仕様。
シートに傾斜が付いているためある程度深く腰掛けられますが、それに加わるのが肩口から上を受け止めるために角度を変えている背もたれ。
頭の重さを預けられるため、より力を抜いて寛ぐ事ができるのです。
そして今回はオットマン付き。オットマンも脚先のフレームが膨らみ前後に倒れにくい工夫が見られますね。
普通の椅子であれば背もたれは補助で、おしりの位置からほぼ全ての体重を逃がす形になりますが、このオットマンがあればおしり~背中~頭に加えて足先で体重を分散。
指先に鉛筆を当てたら痛いですが、逆の考え方でひとつの荷重を全体に分けたらどうなるか。
そう。分散された荷重で身体は楽になり、そしてリラックスできるんですね。素晴らしいセットです。
肘あたりに配置されたアームはシンプルですが、角まで丁寧に仕上げられ野暮ったさはありません。
誤って開かないように固定するヒモはなんと剣道の小手に使うものと同じだそうです。味わい深いディティールですね。
そして部材が必要最低限だからこそ、本体は約6.5kg。小脇に挟んで、もしくは肩に通して持って行きたくなるそんな軽さになっています。
デンマーク語で「新しい」という意味を持つ「Ny」という名前の名付け親、そしてニーチェア エックス80では共同で開発を行った島崎 信氏によると、
新居氏は愛され長く使われるモノづくりのために、「出来るだけ」という言葉をよく使っていたそうです。
出来るだけ少ない部材、そして出来るだけ簡易な構造、そして丈夫さや価格もそれに続きます。
当たり前に使ってもらうために、使ってこそその良さを分かってもらうために。その気持ちは今も続き、そしてアイテムの中にも潜んでいます。
おかげさまで日々素晴らしいデザイナーズプロダクトを多く取り扱わせて貰っているインプション。
そのプロダクトが今も手に入るのは、今も頑張ってそれを繋いでいる人々がいるから。とてもありがたい事です。
もしこの椅子を楽しんで頂けたなら、次は是非ニーチェアのショールームで2脚目を。
良いものは続き、そして繋がれる。その理由を知るきっかけになれば幸いです。
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