特集:Tom Dixon ~実験の申し子~
走り続ける人
今日は太陽の光が肌にまとわりつくような暑い日。
とはいっても、見かける人たちもみな軽やかな服装。気持ち良く過ごせる一日になるでしょう。
光。当たり前に日常にあるエレメント(要素)の一つ。身体に当たれば血液から温めてくれるような日の光に、夜の雰囲気を心地よく彩ってくれる照明の光。
技術の進歩により「こうあるべき」というルールは薄れ、よりオリジナリティを感じるお部屋作りに欠かせないアイテムこそ現代の照明と言えます。
正に今、この現代インテリアシーンを代表するデザイナーのアイテムが入荷致しました。
是非その魅力の一端をご紹介させて下さい。
Pick up items
トム・ディクソン(1959-)。名前だけではイギリスか、それともアメリカの人かと想像するような響き。
実際に氏はイギリスのデザイナーではありますが、その経歴はとてもユニーク。イタリアのシチリア島から繋がるアフリカ玄関口の一つチュニジアで生まれ、母方からはフランスとラトビアの血脈を受け継ぐという文化的に豊かなバックグラウンドを持っています。
また、デザイナーとしての活動の前にはFunkapolitanというバンドのベーシストやDJ等の音楽活動で生計を立てていた時期もあるという、なんとも不思議な人物。
伊 カッペリーニから発表された出世作 Sチェアは、サイドやバックシルエットのスマートさとは裏腹にグラマラスなフロントビュー。破損したオートバイの修理から溶接を学んだという氏のファンキーな精神と、カッペリーニのモダンが高次に融合した傑作です。
ハビタ、アルテックとディレクターを歴任したブランドも素晴らしく、今や時代の寵児といえるトップデザイナーの一人なのです。
Copper Round Pendant
そんな氏が自身のブランドを設立した2002年に発表され、評判を呼んだミラー | Mirrorシリーズ。その特徴は宇宙服のヘルメットに着想した球形のシェードにあります。
フレッシュな輝きは高級感を演出してくれますが、その質量感がお部屋の重心を上げてしまう金属シェード。
シェードの素材を耐熱性が高いプラスチック素材のポリカーボネートに変え、そしてメッキ加工が難しいプラスチックに真空蒸着という新技術を採用。
これによって印象は軽く、金属の輝きを兼ね備えた新たなライティングが誕生したのです。
カッパー ラウンドはそのシェードの下端が切り離され、よりホームユースに向いた雰囲気のペンダント。
鏡面仕上げの外観は外の景色を写し出し、よりつややかな印象に。
こちらはポップなブルーと、さながら小さなブラックホールのようなブラック2つの用意がございます。
Copper Round Pendant Blue
Copper Round Pendant
Copper Pendant Tall & Wide
先述の溶接からモノ作りに入っていったトム・ディクソン。「金属」という素材は氏にとっても特別な思い入れがあるようです。
それに加えてこのY2Kと呼ばれる2000年近辺を契機によく見るようになったのはカッパー(銅)素材。
同世代でドローグデザインの旗手でもあるマルセル・ワンダース、そしてピート・ヘイン・イークも愛用しているカッパーは見る人の血をたぎらせるような蠱惑的な色合いが魅力です。
そして同じ「球」の中でも、上下に引き延ばすか、左右に引き延ばすかで印象はまた異なるもの。
縦のトールでスマートに、もしくは横のワイドでスペースエイジチックに彩ってみるのも楽しそうです。
Copper Tall Pendant
Copper Wide Pendant
Fade Pendant
恥ずかしながら、私は今回の入荷があった時に「全部金属シェードかー」とだまされてしまったのですが(笑)このシリーズを見た時にその異質さに驚きました。
金属の見た目なのに、シェードの先に向けてどんどん色が薄く透明になっていくのです!
うっすらと漏れ出る光はどこかロウソクのような揺らめきにも似て、とてもファンタジーな雰囲気。
モダンにクローム、エレガントにゴールド、そしてラギッドにカッパーと好みで選べるバリエーションがあるのも嬉しいところです。
Fade Pendant Chlome
Fade Pendant Gold
Fade Pendant Copper
Cut Short Pendant
そして最後はカットシリーズ。ジュエリーカットをイメージさせる六角形のシェードは幻想的な輝き。
光を反射するミラー仕上げと光源を包み込む独自のシェードによって点灯時は煌めき、そして消灯時は金属の宝石が表れるという二つの顔を楽しめます。
今私たちは電気を使って当たり前に暮らしを明るくしているように、未来に当たり前と言われる技術というのはこういった驚きを実現する技術なのだと強く感じさせてくれる名品です。
最後に
いかがでしたでしょうか。
1980年代に先述の「Sチェア」。1994年には高温のポリプロピレン樹脂をツールの中で回転させる事で均質なフォルムを可能にした「ジャックランタン」。
2002年には新しい照明の境地を切り開いた「ミラー」、2014年には溶ける照明「メルト」。
そして今現在も100%再生アルミニウムを使用したスタッキングチェア「ハイドロ」と技術革新による新しい形を作り出しているトム・ディクソン。
その切れること無い足跡は、自ら進んで確かめてゆく知的好奇心に溢れています。
深く付いた今回の足跡は、惜しくも全て廃番のアイテム。沢山の中から選べるタイミングはそうありません。
軽量ゆえに全て引掛けシーリングで手軽に楽しめる事も嬉しいデザイナーズライティング。祖師ヶ谷大蔵店はもちろんインプション全店でアツいこのタイミングに、是非いかがでしょうか。
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