GETAMA
GE290

 

 

数あるデザイン家具の中でも、世界中を惹きつけ、深く影響を与えてきた北欧家具。

 

今では歴史の一ページとして語り継がれる存在になりつつありるものが、今ここに現存している。

 

それはとても凄い事なのだとつくづく実感します。

 

 

ハンス・J・ウェグナー Hans J.Wegner  の人間力。

 

 

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誰もが知る巨匠「ハンス・J・ウェグナー Hans J.Wegner」。

 

生涯で手掛けたチェアは実に500以上に上り、そのどれもが名作として世界中で愛されています。

 

 

そんなウェグナー氏が初めて家具作りの世界に足を踏み出したのは、14歳の時。

 

小さい頃から遊び場だった父親の革工房の近くにある家具工房に弟子入りし、弱冠17歳にしてデンマークが定める木工マイスターの資格を取得。

 

木工マイスターとは、日本で言う所の”親方”のこと。伝統の技術を後世に伝えるという役割もあり、これはとてもすごいことなのだとか。

 

その後自身の工房を開く為、家具デザインを学ぶ事ができる”コペンハーゲン美術工芸学校”に入学しました。

 

 

 

 

 

 

そこでの2年間は、彼のデザイナーとしての才能を決定付けたと言われています。

 

しかし何より3年目を前にして学校を自主退学し、かの”アルネ・ヤコブセン”と”エリック・モラー”による建築事務所で働き始めた事が、ウェグナー氏の人生を大きく動かしました。

 

同じ工芸学校のクラスメイトで親友としても知られる「ボーエ・モーエンセン」はその後王立芸術アカデミーに進学しましたが、ハンス氏は実務経験を積みながら実践的にデザインを学ぶ選択をしたのです。

 

 

 

 

 

そんなウェグナー氏の人生を象徴するかのような組織「サレスコ Salesco」をご存じの方もいらっしゃると思います。

 

名作”Yチェア”が世界的に知られるようになってから数年後に発足したこの組織は、ウェグナー氏がデザインした家具各種を複数のメーカーでそれぞれ製作し、共同で販売するというものでした。

 

今回ご紹介させていただく「GE290 イージーチェア」は、このネットワークの中で生み出された、ウェグナー氏を代表する名作となっております。

 

 

 

 

 

このGE290を製作した「ゲタマ GETAMA」社は、当時ソファやデイベッド等、比較的耐久性が求められる家具を得意としていました。

 

ウェグナーは、サレスコに所属する複数のメーカーに対し、それぞれのメーカーが最も得意とする分野に沿ってデザインを手掛けていたのです。

 

このような事は他のデザイナーにそうそう真似できることではなく、現場を知り尽くす木工マイスターとしての技量、デザイナーとしての卓越した知識とセンスが無ければ叶いません。

 

 

 

 

 

 

 

 

幅広な木材を多用したゆとりのあるフォルムは、ゲタマ社の持つ特色が活かされたもの。

 

その中にも見る角度によって変化するフレームのバランス感、チェアの間合いに存在する空気の濃淡の変化には感嘆とさせられます。

 

掛け心地の要となるシートは、ゲタマ社がマットレス等で長年培ってきたノウハウが惜しみなく発揮されたもので、イージーチェアとしてこれ以上ない完成度を持つ作品となりました。

 

試し掛けさせて頂きましたが、その座り心地は活き活きと身体を包み込んでくれるもので、広々としたアームの存在感が心地よく、寛ぐことへの喜びを、心から感じさせてくれるものとなっております。

 

 

 

 

 

 

 

 

スッキリとした継ぎ目。

 

決して重装備とは言わないスプリング類。

 

何処を取ってもそのディティールは非常に洗練されており、且つ使い手に対し誇張を見せるような技巧は一切ありません。

 

上質な素材を、十分な練度で。

 

選び抜かれた工程を、丁寧に。

 

GE290には、北欧のもの作りの魅力を象徴するかのような、そんな心地良さがあります。

 

 

 

 

“クラフトマンシップの極み”とも称されるハンス・J・ウェグナー。

 

家具にとって本当に必要な要素のみを残す為に「無駄を削ぎ落す」ことを突き詰め、その信念を貫いた事でも知られています。

 

それは”デザイン”の本来の意味である「暮らしと社会を整える」という事において、ウェグナー自身にとって、周りに存在する家具作りの世界そのものを磨き上げる事だったのだと私は解釈しています。

 

そんな彼の人間力を、感じずにはいられないのです。