Artemide
Tolomeo micro Table Lamp

 

 

突然ですが、東急田園都市線の用賀駅には上り階段が扇状に広がる、野外ステージにも似たような入り口があります。

その扇の左はじっこにはエスカレーターがあり、そこを上った先には私も良く使うバスターミナルがあったりもします。

 

そのエスカレーターの右手側には階段とエスカレーターを隔てる壁があるのですが、その途中にある窓のように切り抜かれた大きな孔からは、とても気持ちの良い光が差し込んで来ます。

 

ただ光を浴びただけでは単なる日常の一幕。ですが日向と日陰のように意図を以って対比された光には、まるで時間が盗まれたように錯覚してしまう、不思議な空間を作りだす力があります。

多くの人がその力に魅せられ、その不思議を捕まえようと格闘してきました。

 

今回はそんな中で生まれた名品の一つをご紹介。宜しければ最後までお付き合いください。

 

 

 

 

普段の中にこそ活きる、デザインのチカラ

 

 

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光の中でも、電気を用いた照明というのは人類の歴史の中でも比較的近年の話。発明家エジソンが白熱電球を発明したのは1879年、日本の上野駅に白熱電灯24個が初めて点灯されたのは明治時代の1884年。

 

おおよそ150年ほどの時間の中に詰まっているお話なんですね。

 

 

 

 

 

 

少しずつ暮らしの中に普及してゆく電灯。最初はお部屋を全体的に照らす裸電球1つが複数個になり、光を収束するシェードが付いて、パーソナルな使用のためのデスクライトという種類にまで発展。手もとに光を当てられる事で、読書から時計の組み立てや彫金というような精緻な作業も可能に。

一日のあいだにギュッと作業を圧縮できる利点は人類にもたらされた大きな進歩ですね。

 

近年には「プロダクトデザイン」という製品をより美しく、機能的にする行いが市民権を獲得。ただ単に照らすだけではなく、見た目や使い勝手といったそれ以外の要素がとても大切になっています。

 

 

 

 

 

 

今回の照明を製造するアルテミデ社はイタリアのメーカー。ありきたりな既存の概念からの脱却を目指した1980年代に前後するポストモダンの時代において、フロスやカルテル、アルテルーチェ、フォンタナアルテといった多くのメーカーとしのぎを削っていた実力派です。

 

デザインはミケーレ・デ・ルッキ。現在も活躍する建築家・デザイナーですが、デザイナー集団「メンフィス」に在籍していた実績を抜きに語る事は出来ません。

 

ポストモダンを現代につなげる最重要人物が1987年に発表したのがこのトロメオ シリーズです。

 

 

 

 

 

 

 

無駄な物を極限まで削ぎ落したフォルム。2箇所の調節が出来るデスクライトで「細い」印象を与えるものはそれほど多くありません。

 

アームの先には電球という「おもり」が付いているので、通常のライトならば重さを支える関節部は大きくゴツくなってしまいます。

 

それを解決するのは強度があり軽い金属アルミニウムと、ワイヤーによるテンション機構。

細く締ったフレームを、金属の糸であるワイヤーで引っ張る事でスタイリッシュな見た目と使い勝手を両立させているのです。

 

 

 

 

 

 

アーム移動の固さは関節部にある丸いナットで調節が可能。シェードは360回転し、スペーサーをつまめば引き寄せるのもスムーズ。またシェードには放熱も兼ねた孔が天面に開いているので、間接照明のようにやんわりと上部も照らしてくれます。

 

今までにない美しさだけではなく、それに負けない使いやすさが備わっているのですから、人気があるのもうなずける話。

 

実際に、デザインに於いて最高の栄誉であるコンパッソ・ドーロを受賞していますので、伊達ではないという事ですね。

 

 

 

 

 

トロメオのテーブルランプは3種類の大きさがありますが、今回は一番可愛らしいマイクロ。そして色はポップでアルミの明るさに映えるレッドカラーです。

 

使いやすさは妥協したくないけれど、雰囲気のあるランプが欲しい。そんな人にもこたえてくれる名品です。

デザインによって進化した光。使う事で不思議な魅力、味わってみませんか？