人が夢を見るとき

 

 

先日よりご紹介させて頂いている、倉俣史朗(くらまた しろう)のアイテムたち。

 

経堂店と自由が丘店には、浮遊感が素敵なフラワーベースが入荷しておりますが、祖師谷大蔵店にはなんと3点の入荷が。

 

80年代のリバイバルの高まりで更なる人気となっているポストモダンですが、日本に於けるポストモダンの立役者として中心的な位置にいた倉俣史朗のアイテムはその中でも一際高い人気を誇ります。

 

一体それは何故なのか。

 

来歴などについては先日のコラムより詳しくご紹介しておりますので、

ここは贅沢にも先入観無く、五感で感じた事を中心にそれぞれのアイテムをご紹介したいと思います。

 

本当に希少なアイテムとなりますので、

電脳の紙面上ではございますが、是非お付き合い頂ければと存じます。

 

 

 

まるでデイ・ドリーム

 

 

ポストモダン。POST(前)、そしてMODERN(現代)。ミッドセンチュリー期を経て進化した機能的な家具にカウンターを食らわすように、新しい価値を求めて切り開いたムーブメント。

 

手工技術を凝らした贅沢品とも、鉄筋やコンクリートといった強度ある建材を利用する事で可能になった構造的な作品とも異なる「意味」を生み出した意義は果てしなく大きいものがあります。

 

角が尖っていたり、奇抜に受け止められるという様々な方面の「リスク」を受け止めた上で、それを突き破る選択をする。

 

そうして生まれたアイテムたちは、停滞した価値観に飽き飽きした人々の目を覚まさせてくれるのです。

 

 

 

 

Writing Desk

 

 

それでは早速ご紹介に参りましょう。

まずは筑波第一ホテルのため、フルオーダーにて制作されたライティングデスク。

 

先年の12月、惜しくも逝去された建築家 磯崎新氏が設計を担った、学園都市の中核施設つくばセンタービル。

その一群の中にある筑波第一ホテルの内装を倉俣氏が担当して生まれました。

 

 

 

 

 

 

テーブル、デスクと言えば基本的に「天板」に「脚」が付いたものが連想されますが、それを裏切り「テーブル」より「デザイン」に意識がゆく直線的なデザイン。

 

ロの字の脚部に脱落防止と思われる背面のエッジはブラックカラー。メラミン天板のホワイトと組み合わさる事で、80年代を感じさせるほのかな光沢感のあるモノトーンに仕上がっています。

 

 

 

 

 

 

 

収納という機能に導かれた抽斗ごとの深さに合わせ、天板の幕板も高さ12.2センチと幅が取られています。

使うための家具でありながら、どこかそれとは切り離された世界に存在しているような雰囲気漂う1台。

細かなバランスも含めた思考の結果が反映されていることを知ることが出来ます。

 

ナチュラルカラーはありがたいことに何度か入荷がありましたが、ブラックカラーのフレームは今回初入荷。

モノクロ写真のため断定は出来ませんが、雑誌「新建築」におけるホテルのシングルルームで紹介されているモデルとおそらく同じ仕様かと思われます。

 

どちらも希少なお品物であることに違いはありませんが、よりマニアックな方にもお勧め出来るのは間違いナシとなっております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

B.I.-86  Expanded Metal Chair

 

 

 

そして倉俣史朗と言えばイメージする事も多いであろう素材、「エキスパンドメタル」を採用したダイニングチェア。

 

エキスパンドメタル、すなわち「金網」。小学校の敷地を分けるフェンス、高速道路に掛かる橋から落ちないように張られたフェンスと言ってみれば同じモノ。一体誰がこの素材を使って椅子を作ろうと考えたでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄の板に切れ込みを入れて、それを引き延ばす事で生まれるエキスパンドメタル。それはハチの巣のように規則正しい組織が獲得する強度を持ち、光を通す隙間を得る事で見た目・重量共に軽やかさを感じさせます。

 

シートはそのエキスパンドメタルをループさせたような造り。これもまた印象的な脚部のフレームを上下から挟み込むように巡らせて、丁寧に溶接されています。

 

 

 

 

 

 

 

椅子の正面向かって左右に凹凸が付いた、厚さ1~2mm程の“元”鉄の板。特別なフチが無いため切りっぱなしのデニムのような縛られない自由(=フリーダム)な感触を受ける椅子。

 

指は掛かれど握れない細かなメッシュの手触りに、今の季節ならば弱く差し込む昼下がりの光が描く陰影も特別に思わせてくれます。

 

真円のフォルムを巧みに使った3本脚のC.I.-86、同じくエキスパンドメタルを採用したアームチェアA.I.-86等が一連のシリーズとしてありますが、より身近なダイニングチェアに落とし込まれたB.I.-86は普遍的だからこそより倉俣氏の指向を感じられる1脚です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

STAR PIECE Remake TABLE

 

 

 

そして最後はスターピースを贅沢に使用したローテーブル。

 

昭和の後の方に生まれた私ですが、1980年代に物心が付くか付かないかといった若輩者の記憶の中にも面影を残す象徴的なテクスチャー。アトランダムな配置のガラスたちは規則正しく見えるよう熟練の職人たちの工夫によって造り出された賜物でもあります。

 

 

 

 

 

大理石と言えば高級感の代名詞ともいえる素材です。すべすべで、流麗な模様は積み重なった年月が作り出す地球のアートさながら。ホテルや高層のオフィスビル等といったファーストクラスを演出するのに相応しい素材。

 

敢えてそれを砕いて、間にセメント等を流し込む事で作り出される半人工素材の「人造大理石(テラゾー)」。これが出来上がった事により、天然大理石から切り出すといったサイズの制約はなくなり、また端材にも利用価値が生まれました。

 

 

 

 

 

 

砕いた大理石を並べるという事は、自分の意図を混ぜ込める手段が出来たという事でもあります。都営浅草線の工事に使用されていたテラゾーを見た氏はテラゾーの大理石を色ガラスに置き換え、エットレ・ソットサスとその思考を分かち合うような遊び心のあるカラーリングを表します。

 

「星の欠片」という、直訳するとあまりにもポエティックなネーミング。初めて発表された松屋銀座本店のイッセイミヤケでも話題となり、翌1984年にはNYのイッセイミヤケにてコカ・コーラのリターナブルビンを多く砕いて封入したショップディスプレイを発表。デザインという概念を知らない人も魅了する確かな実力を知らしめました。

 

 

 

 

 

今回はその貴重なスターピースをしっかりと支えるUSMハラーのフレームに載せる事で、ローテーブルとして使えるようにリメイクした逸品。

ディスプレイするだけでも絵になりますが、テーブルとして取り込む事でより贅沢に楽しむ事が出来ます。

 

TOKYOやNARA、KYOTOとスターピースが採用されたテーブルはラウンドやスクエア等左右対称のものが多いので、コーヒーテーブルやちょっと低めのコンソールとして使えるレクタングル(長方形)テーブルとしての選択肢は自画自賛ながら嬉しいポイントなのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

ビビッドなレッドもあれば、フィリグリー技法のようなキャッチーなものも。全てを楽しめるのは所有した方のみの特権。

あなたの嗜好を十分に満たすことのできる、素敵なテーブルです。

 

 

 

 

 

 

最後に

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

自然界にはほぼ存在しない直線しか用いず、切り取られた線が平行に走る事で面になり、並んだ面の比較によって黄金比のような数学的美しさを得たライティングデスク。

 

一枚の板が等しく切り開かれ、その薄さのままに円環を描くことで、夕暮れにフェンスのそばを自転車で走り抜けたような夢見心地にいざなうダイニングチェア。

 

自分が歩き手を触れる床壁がまるで満点の星空かのように、つやややかな煌めきから夢幻の世界にいざなってくれるテーブル。

 

 

人が暮らしていると直面せざるを得ない、日々の生活のためのあれやこれや。

倉俣史朗のデザインしたアイテムを見ていると、しがらみや当たり前と捉えていた事から頭の中の枷が外れ、自由に感じ、考えてよいのだと許してくれているように感じられます。

 

人が暮らすための道具である家具で、使う事よりも先にある「夢」を表現する事が許された数少ない人、倉俣史朗。

56歳という、あまりにも早すぎる人生の中で作られたモノたちは、今後も色褪せる事なく至高であり続けます。

 

 

 

 

 

 

想像を制約することなく創造をもたらした渾身のアイテムたち。

暮らしを作り上げる苦悩を知る人にはその軌跡を、美の信奉者には白昼夢を見せてくれる。

人気の理由の一片を、少ないながらもご説明出来ていれば嬉しく思います。

 

他とない機会となりますので、迎え入れをお考えの方はどうぞこのタイミングをお見逃し無きようお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

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