Fritz Hansen
OXFORD Chair

 

 

気取っていると言われても、身にまとう事を止められないアイテムってありますよね。

ハンフリー・ボガードのようにフルレングスのトレンチを、アート・ガーファンクルのようにメルトンのダッフルを、日本でいえば高倉健さんのようにバラクータのスイングトップを。

 

自分が憧れる、その空気感を少しでも身近にしたくて背伸びをする。いつしかそれが自分の血肉になっていることを願って。

 

今回のご紹介も、そんな背伸びしてもトライしたくなる1脚です。

宜しければ最後までお付き合いください。

 

 

厳しすぎる優しい人。

 

 

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今回の椅子はデンマークが生んだ巨匠のひとり、建築家 アルネ・ヤコブセンによるデザインです。

 

ヤコブセンは1902年にデンマークの中心コペンハーゲンに生まれました。貿易商を営むユダヤ人の両親を持つ事もあり高い水準の教育を受けていたヤコブセン。

当初画家を目指しましたが反対を受け、知己であった建築家フレミング・ラッセンの勧めを受け建築の道へと進みます。

 

1929年コンペティションに発表した「未来の家」では円柱状の外観に自動車や車両用の出入り口が備えられるなど、モダンのデザインと革新的なコンセプトが注目を集め、ベルビュー地区の再開発、オーフス市庁舎やムンゲゴー小学校、SASロイヤルホテルなどを設計するなど華麗なキャリアを築いています。

 

 

 

 

 

 

精力的な人物であるヤコブセンは、建築物からその中に配置する家具のデザインまでトータルに行っています。

ヤコブセンの事務所に勤務していた若き日のハンス・J・ウェグナーが、オーフス市庁舎のチェアをデザインしたというのはよく知られているお話ですね。

 

モダンな建築物の中で調和するアイテムには、今までにない魅力があったのでしょう。ベルビュー地区ではその名が付いたベルビューチェア、オーフス市庁舎のカンファレンスチェア（ウェグナーによるデザイン）、ムンゲゴー小学校のモスキートチェアとそれぞれ印象的な作品を残しています。

製薬会社ノボノルディスク社のためにデザインされたアントチェアは、セブンチェアにつながる歴史的な1脚です。

 

（現在 祖師谷大蔵店には、ムンゲゴー小学校のためにデザインされたスクールデスクが入荷しております。興味のある方はそちらも是非。）

 

 

 

 

 

 

1960年、キャリアとしては後半に差し掛かる頃オックスフォード大学のセント キャサリンズ カレッジに取り掛かります。

ハーバード大学、スタンフォード大学らと並ぶ世界最高峰の学府。設立も11世紀末と歴史あるクライアントにヤコブセンも奮起した事でしょう。

 

完成した建物は歴史に残る素晴らしいものになりました。水平に長く伸びる建物の外観には歴史を感じさせるレンガ、ファサードには採光性の良いガラスがあしらわれ正にモダン。

その雰囲気に相応しくあるように設計されたインテリアもモダンなシルエットです。

 

 

 

 

 

 

教授用に設計されているそんなオックスフォードチェア。緩やかに波打つ背もたれが印象的です。

華奢にも思えますが、フレームに使用されたプライウッドのおかげで座った時に不安を感じる事はありません。

 

 

このカーブは深く腰掛けた際に腰に沿い、背中を受け止めてくれる曲線を描いています。

背筋を伸ばして、気品ある姿勢である事をサポートしてくれる、品格あるエリートが使うにふさわしい1脚。

 

ハイバックならではの広い面積で身体を受け止める事で、より気持ちの良いしなりを感じて頂けます。

 

 

 

 

 

 

5本足のキャスターは安定性とデスクチェアとしてふさわしい機動性を兼ね備えており、

ダイニングシーンはもちろんご自宅の書斎でも取り入れやすい仕様。

 

座面高の調整はシートピンによるアナログな固定式。フレームにあるシールから恐らく1970年代の製造と思われます。

実使用の跡が見られるものの、長い年月使われ続けてきた味わいが感じられるコンディションです。

 

 

 

 

 

現在フリッツハンセンではローバック・ミディアムバックのみの取り扱いとなり、印象的なデザインのハイバックは手に入りません。

お気に入りの1脚に、飛びぬけた美しさをお求めになる方にはハイバックは最適な仕様かと思います。

 

上質なアイテムを使い込む事によって生まれる、陰影のある味わい。

既にお持ちの方も、これからお持ちになる方も、このチェアをお使いになる事でその雰囲気を感じて頂けると思います。

あなたの望む理想に寄り添う、こんな1脚はいかがでしょうか。