CHRISTENSEN&LARSEN
Medallion Chair

 

 

暖かい日よりが続いています。

日が暮れると寒くなるのに、昼は暖かいので長袖を着る気があまりしません。

おかげでアウターはそこそこあるのに、中に着るものに困る有様です。

持ち物のバランスが整ってないと、こういった季節の変わり目に不便するようです。

 

バランスは見た目のデザインにおいても重要。たとえば洋服の仕様である袖。

 

春から夏にかけては、蒸し暑さを避けるように腕をまくれる物を良く着ます。

逆に秋から冬にかけてはそこから冷たい風が入り込まないようにギャザーが効いているものを良く着ますね。

 

冬服や夏服といった季節ならではのアイテムは、細かく使う人に便利なディティールの積み重ねなのだと感じます。

それでは家具はどうでしょうか。ちょうど素敵な椅子がありますので一緒に見てゆきましょう。

 

 

 

 

まるでパズル

 

 

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今回はラウンジチェア。何も知らずとも腰掛けてみたくなるような美しさがあります。

評価の高い家具を作る北欧の中でもとりわけ人気のあるデンマークにおいて作られた1脚になります。

 

 

 

 

 

 

製造はクリステンセン＆ラーセン。1940年代に創業しミッドセンチュリー期を中心に高い技術による美しい家具を多く発表しています。

 

今回のデザイナーであるイプ・コフォード・ラーセンとのタッグがひときわ有名ですが、ヨルゲン・ホヴェルスコフとのハープチェアといった、高い技巧が求められる作品にも携わるかなりの実力派であったことがうかがえます。

 

 

 

 

 

 

デザイナーは先述のイプ・コフォード・ラーセン（Ib Kofod Larsen）。1921年デンマーク生まれの氏は王立美術大学の卒業後、スネーカーギルドと呼ばれる職人のためのコンクールでの受賞をはじまりに多くの受賞を重ねその人気を高めてゆきます。

 

イギリスの人気ビンテージブランド、ジープランは当時の会社代表がラーセン氏を招き生まれたシリーズ。突出しすぎたところのないバランスの良いデザインは温かみがあり、眺める度にじわじわと自分の中でその魅力が増してゆく作品が多い印象です。

 

 

 

 

 

 

今回の椅子はどうでしょうか。メダリオンチェアと呼ばれるこのラウンジチェア。このままホテルに置いてあってもなんら不自然のない、上品な佇まい。

 

流麗な曲線からは手仕事の跡がひしひしと感じられるため、つい触れてみたくなるフォルムです。

 

 

 

 

 

 

背もたれがメダルに見えることから名づけられたメダリオンチェア。その通り、穏やかな円形のシートは座面、背もたれともに幅63センチととても広く作られています。

大柄な方でも困らないサイズであるのは確かですが、中肉中背の私が座ってもどこかほっとする座り心地です。

 

ツートーンが可愛らしいシートの内部には2センチ以上ある座板と、密度のあるウレタンがしつらえてあるのでどちらかというと沈み込みの少ない固めの座り具合。ゆったりと座れる計算された角度、窮屈さを感じさせないたっぷりのシート、美しいフレームと様々な要素が背筋の伸びた品の良さを演出しています。

 

 

 

 

 

 

広さのある座面を取り付けるためにフレームの幅も広げると大味になってしまいますが、ラウンジチェアならではの角度を巧みに使い、針の穴を通すような絶妙な箇所からフレームに接続。荷重が背もたれ側に集まってしまう問題はシートの裏側にある逆ハの字の構造や、気持ち太めに取られた後ろ脚によって解決しています。

 

有名なイームズのシェルチェア、パントンのパントンチェア、ブロイヤーによるチェスカチェアといった名脚にも通じる、実現がかなわなかった美しい構造をクリアする静かなアイデア。

出来上がりのかたちは様々ですが、ハードルを越えた椅子はほかとは一線を画す魅力を持っているのだと思います。

 

 

 

 

 

ただ見るだけでも美しい椅子。

椅子であることには違いないはずなのに、巧みなフレームワークは思わずいろいろな方向から見返してしまうどこか立体パズルのような不思議が隠れています。

 

美しさのために何かを犠牲にすることなく、あっさりまとめてしまうのはイプ・コフォード・ラーセンならではのバランス能力。

存分にお楽しみいただける1脚を、ご自宅にいかがでしょうか。